第1句から第10句

第 1 句 相続を たのしく学ぶ 五七五

2014年4月23日 (長岡俊行)
 
相続は人が亡くなってから発生するものなので、それに対して暗いイメージを持たれるのは当然のことと思われます。また、「遺言」や「相続」といった言葉を口にすること自体、縁起が悪いこととして避けられがちなのも事実でしょう。
 
そういった面があるからか、これまで遺言や相続について学校で習うようなことはありませんでした。しかし、相続は多くの人に関係してくることであり、正しい知識がないままにその手続きを進めてしまうと、家族関係の悪化など、思わぬ問題を引き起こしてしまう可能性があります。
 
そこで、八王子高齢者支援協会では、一般の方々に相続を楽しく学んでもらう手段として、「相続川柳」を始めることにしました。
 
俳句のように季語などのしばりは入れず、字余り字足らずについても基準をゆるやかにして、週に数本のペースで更新していこうと考えています。相続や遺言といった、これまで意識的に避けられていたものを、少しでも身近に感じていただければさいわいです。
 

第 2 句 長男の 嫁にはないよ 相続分

2014年4月25日(井出誠)
高齢者の方が日々の生活で介護を必要とする場合、息子夫婦と同居していれば日々の介護を行うのはお嫁さんの仕事となることが多いわけです。親との同居といえば、やはり確率的には長男さんとの同居率が高いですね。
 
長男の嫁が1年365日、朝から晩まで義父の介護に奮闘しても、残念ながらお嫁さんには法定相続分は無いんですね。もちろん長男さんがご存命であれば夫婦の財布は一つですから幾ばくかの相続分は入ってくるわけですが、息子である長男さんが既に他界しているにもかかわらず、嫁は義父と同居して介護にあたっているなんて場合もあるかもしれません。
 
こんな場合は遺言を残すことで、お嫁さんへの遺贈をお考えになってはいかかでしょうか。ちなみに長男だけでなく次男の嫁や三男の嫁にも法定相続分はございませんのであしからず。
 

第 3 句 内縁の 妻に遺言で 家のこす

2014年4月30日(長岡俊行)
亡くなった人の配偶者は、家族の構成に関係なく相続人になります。つまり、かならず遺産をもらえるというわけです。そして、夫婦間の愛情があろうがなかろうが、基本的にはほかのだれよりも多くの遺産をもらえます。
 
ただし、ここでいう「配偶者」はあくまでも婚姻の届出をしている人に限られますので、いわゆる「内縁の妻」などは含まれないんですね。法律上の妻(本妻)とは別居して内縁の妻との事実婚が何十年も続いているような状態であっても、いざ相続となったら、遺産をもらえるのは本妻だけなんです。
 
ですから、長年にわたって一緒に住んでいた家が本妻の名義になってしまうようなこともあり得るわけです。
 
そういった心配のある方は、内縁の妻に財産を遺贈する遺言をのこしておくとよいのではないでしょうか。ただし、本妻などの法定相続人には遺留分という最低限の取り分がありますので、その点には気をつけてください。
 

第 4 句 エンディング ノートは法的 効果無し

2014年5月2日(井出誠)
昨今「エンディングノート」という言葉をよく耳にするかと思います。書店に行けばいろいろな出版社からいろいろなタイプのエンディングノートが販売されていますね。一般的にエンディングノートには、自らの個人情報や財産の情報、老後の介護や医療についての希望、死後の葬儀やお墓についての希望等々を書き記していくわけですが、いくら事細かく丁寧にエンディングノートを書いても、実は遺言書のような法的効力はないんですね。
 
「私は、死後の遺産分割についてエンディングノートにしっかり書いたからもう安心」と思っている方もたまに見かけますが、遺族はエンディングノートに書かれた内容には縛られません。だからといって「だったらエンディングノートなんか書いても意味がない」というわけでもないんです。
 
エンディングノートは、後々、自筆証書遺言や公正証書遺言を作成する際に下書きとしてとても役立ちます。また、認知症になってしまった場合などに、望んでいた医療や介護を受けられることにもつながります。何より皆さんの頭の中にある心配事や不安事、家族や友人に伝えたい事等々を書面に書き記すことで、心がスッキリするのではないでしょうか。そう考えると、エンディングノートは日々の生活をいきいき安心して暮らしていくための便利なツールといえるかもしれませんね。
 

第 5 句 子がいれば 第一順位の 相続人

2014年5月5日(長岡俊行)
人が亡くなると、その人が持っていた財産や権利などは、原則的にはその家族へと受け継がれていきます。そして、家族の中にも遺産をもらえる順番というものがあって、それは民法できっちりと決められています。
 
第一順位の相続人は、亡くなった人の子供です。つまり、親の遺産を子が受け継ぐというわけです。正確には「直系卑属」といって、子だけでなく孫やひ孫など、とにかくその人の「子の子の子の……」といった具合に続いていくことになります。
 
ただ、子が生きていれば孫やひ孫が相続人になることはなく、あくまでも「子が亡くなっていれば孫が、孫も亡くなっていればひ孫が」という関係になっているんですね。
 
ちなみに、家督相続の制度があったころは、基本的に長男がすべての遺産を受け継いでいましたが、現行の民法では、すべての子が平等に遺産を相続することになっています。
 

第 6 句 相続が 遺言ない為 争続に

2014年5月7日(井出誠)
「争続」という言葉を目にする機会があるかと思います。明確な定義があるわけではないのですが、相続における相続人同士の遺産分割をめぐる争いを意味した造語と考えてよいのではないでしょうか。
 
いざ相続が発生しますと、遺言書がない場合は、一般的に相続人全員が集まって遺産分割協議を行うこととなるわけですが、結局は財産の取り合いですので、まったく揉めないほうがマイノリティかと思います。ただでさえ、親族間でお金の話をするのは嫌なものですよね。
 
そんなとき、遺言者の意思をしっかり書き記した遺言書があれば、残された大切なご家族間での相続トラブルを未然に防ぐことができるかもしれませんね。
 
相続におきましては「遺言による相続分の指定が、法定相続分に優先する」といった大原則がございます。また、遺言書には遺言者の気持ちを書き記す「付言事項」というものがあります。なぜこのような相続割合にしたのか、なぜ兄弟で相続分に差を付けたのか等々書き残すことで、相続人は亡くなった方のお気持ちを知ることができ、不要な親族間での争いを避けることにもつながるでしょう。
 

第 7 句 子のいない 子の財産を 親が継ぎ

2014年5月9日(長岡俊行)
第一順位の法定相続人がいない場合、つまり子や孫といった直系卑属が一人もいない場合には、亡くなった人の両親や祖父母といった直系尊属が相続人となります。
 
もともと子がいない人はもちろん、不幸にも子が先に亡くなってしまい、なおかつ孫もひ孫も(それ以降も)いない人が亡くなった場合などが、これに該当するわけです。
 
両親がそろっていれば父と母とで2等分、祖父母がそろっていても祖父と祖母とで2等分するのですが、父と祖父が残っている場合などは、父だけが相続人になるんですね。
 
第一順位の直系卑属と同じ考え方で、「父母が亡くなっていれば祖父母が、祖父母が亡くなっていれば曾祖父母が」といった具合に、理屈としては何代前まででもさかのぼるわけですが、現実的にはせいぜい祖父母までかなという印象です。
 
ちなみに、配偶者の直系尊属、つまり義父母などには最初から相続権がありませんので、ご安心……もとい、ご注意ください。
 

第 8 句 子の認知 遺言でするなら 執行者

2014年5月11日(井出誠)
近年、母子家庭の数が増加傾向にあるようです。その中には法律上の婚姻関係にない男女の間に産まれた婚外子も多く含まれていることでしょう。婚姻関係がなくとも母親と子供の親子関係は出産という事実によって当然発生しますね。しかし父親と子供の親子関係はそうはいきません。
 
故に、父親が亡くなって相続が発生した場合でも、婚外子の場合は、そのままでは法律上の親子関係が未だ発生していませんので相続人にはなれず、遺産は一切入ってこないということになります。
 
婚外子について、父親が自らの子であると認め、法律上の親子関係を生じさせる制度を「認知」と言います。「認知」はお役所へ届け出て初めて成立しますので、生きている間にのみ許される制度と思われている方も多いようですが、遺言によって「認知」する事もできるんです。
 
ただし、遺言による「認知」もお役所への届出は当然必要となります。その為、遺言により「認知」を行う場合には、実際にその遺言内容を具体的に実現する「遺言執行者」の存在が不可欠です。
 
遺言で「認知」をするなら、あわせて「遺言執行者」の指定もお忘れなきよう。
 

第 9 句 親も子も なければ兄弟 姉妹へと

2014年5月13日(長岡俊行)
第一順位と第二順位の相続人がいない場合、つまり、子や孫などの直系卑属も、父母や祖父母などの直系尊属もいない人が亡くなった場合には、その兄弟姉妹が相続人となるのですが、これが大変な案件になることが多いんですね。
 
いくら血のつながった兄弟姉妹でも、ある程度の年齢になれば離れて暮らしているのが一般的です。そして、親もいない状況を考えると、お互いに高齢者である可能性も高く、その人たちが遺産分割協議を進めていくのが困難であることは、容易に想像できるのではないでしょうか。
 
さらに、兄弟姉妹の中にはすでに亡くなっている人がいることも十分に考えられ、そうなってくると甥(おい)や姪(めい)とも話し合う必要が出てきます。日ごろから付き合いがあるのならまだしも、そうでない場合は連絡を取るのでさえ一苦労というわけです。
 
このような場合に有効な遺言があると、のこされた相続人の負担はかなり軽くなるんですよね……。
 

第 10 句 相続の 最低取り分 遺留分

2014年5月15日(井出誠)
世の中、期待通りにいかないことは多いものですね。
 
相続においては、相続人の構成によって相続人ごとの取り分に定めがございます。この定めを法定相続分といいますが、これはあくまで遺言による相続分の指定がない場合のことでして、大原則は「遺言による相続分が、法定相続分に優先する」というわけです。
 
さて、相続人となる人は、えてして自らの取り分を予想し期待します。
「三人兄弟だから6分の1はもらえるはずだ」とか、
「一人息子だから2分の1はもらえるはずだ」とか、
頭の中にはおおよその金額が浮かぶわけです。
 
しかし現実には、予想をはるかに下回る配分額が書かれている遺言や、ときには愛人に全財産遺贈して、妻や子供には一銭も残さないなんて遺言もあるかもしれません。
 
こんなとき、民法は一定の相続人に対して最低限の権利を守ってくれます。遺言によっても侵すことのできない、相続人に保障された最低限の相続分、それが「遺留分」です。
 
遺留分を侵害する遺言や生前贈与があった場合、遺留分を侵害された相続人は、侵害している相手に対して遺留分減殺請求権を行使することができますので、覚えておいてください。ただし、遺留分は直系尊属および直系卑属、そして配偶者である相続人に認められた権利ですので、兄弟姉妹である相続人には認められておりません。
 

ブログから本が生まれました!


「相続を気軽に学べる解説書を」ということで、八王子の行政書士・社労士の井出さん(至誠法務労務サポート代表)と一緒にコツコツと書き溜めたブログが、1冊の本になりました。
 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。口語調の解説文が「わかりやすい!」と評判です。

ABOUTこの記事をかいた人

はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
中小企業の経営に役立つ情報を発信していきたいと思っているのですが……