第21句から第30句

第 21 句 印鑑は 認めで押せる 自筆遺言

2014年6月9日(長岡俊行)
自筆証書遺言には、自分の氏名を手書きしたうえで印鑑を押さなければなりません。つまり、署名捺印が必要なんですね。
 
この印鑑に関しては、とくにきまりがあるわけではありません。実印はもちろん、印鑑登録をしていない、いわゆる認め印でもよいとされています。「シャチハタ」に代表される、朱肉が不要な浸透印といわれるものであっても、それだけで無効になるわけではないようです。
 
とはいえ、やはり誰でも手に入れられて自由に押せるような印鑑を使ってしまうと、「本当に本人が押したものなのか?」という疑問を残すことにもなりかねません。
 
中途半端な自筆証書遺言のおかげで、かえって相続人が混乱してしまうような話をたまに聞くことがあります。実印とまではいかなくても、それなりの印鑑を押しておいたほうが無難なのではないでしょうか。
 
ちなみに、印鑑代わりの拇印が認められた判例もあるようですが、判例があるのは裁判沙汰になった証拠ですから、やはり避けておいたほうがよさそうです。
 

第 22 句 葬祭費 国民健康 保険から

2014年6月12日(井出誠)
日本は国民皆保険制度ですので、お亡くなりになった方も何かしらの公的医療制度の被保険者であったことになります。高齢の方ですと、国民健康保険または後期高齢者医療制度の被保険者というパターンが多いですね。
 
国民健康保険の被保険者が亡くなった場合、国民健康保険から「葬祭費」という名目で幾ばくかのお金が支給されます。これは後期高齢者医療制度も同様です。
 
「いくらもらえるのか?」ですが、これは市町村によって異なります。おおむね3万円~7万円の間ですね。ちなみに健康保険からは、「埋葬料」という名で5万円が支給されます。
 
さて、この「葬祭費」は誰がもらえるのかというと、「葬祭費」というくらいですから、葬祭を執り行った喪主が受け取ることになります。喪主が市町村の窓口へ申請することで受け取れます。ということは、ずっと申請しなければどうなるのでしょうか? 「葬祭費」は、葬祭を行った日の翌日から2年を経過すると時効により支給されませんので、ご注意くださいね。
 
それと、最後に「葬祭費」は相続財産なのか否かという点ですが、「葬祭費」は相続財産にはあたりませんので、覚えておいてくださいね。
 

第 23 句 お腹の子 生まれてきたら 相続人

2014年6月16日(長岡俊行)
あまり考えたくないことですが、妊娠中の妻を残して夫が亡くなってしまうことがあります。このような場合、相続においては、お腹の中の子は「既に生まれたものとみなす」と民法に定められています。
 
つまり、お腹の中にいる子も、父親の遺産を受け継ぐことになるんですね。また、父の直後に祖父(母)も亡くなり、そのときもまだ生まれていなかった場合には、同じ理屈で孫として代襲相続することになります。
 
ただし、これには続きがあって、残念ながら死産だった場合には適用されないことになっているんですね。ですから、父親が亡くなってからその子が生まれてくるまでの間というのは、相続人が確定しない不安定な時期といえます。
 
ほかにも子がいる場合は、胎児が生まれるかどうかで子の法定相続分の割合が変化します。それに対して、ほかには子がいない場合は、相続人の組み合わせそのものが変わってきます。「妻と子」になるか、それとも「妻と父母」になるか、これはけっこう大きな違いなのではないでしょうか。
 
そのようなわけで、実際には子が生まれるまで遺産分割協議を待つのが一般的なようです。
 

第 24 句 分割の 禁止を遺言で 死後五年

2014年6月20日(井出誠)
相続は、被相続人が死亡した時から開始されます。
 
以後、被相続人の遺産を残された相続人等が引き継ぐことになるため、一般的には相続人が集まって遺産分割協議を行うことになります。
 
しかし、被相続人が自らの死亡後の一定期間、遺産を分割されたくないと考えていたとしたらどうでしょう?
 
例えば、子供はまだ高校生だから、遺産分割の意思決定をさせるにはふさわしくないと考え、子供が成人になるまでは待ちたいといった場合。
 
事業に使っている土地建物をすぐに分割されては、会社経営に支障をきたすため、一定期間は遺産分割を禁止したいといった場合。
 
相続開始後直ちに分割を認めてしまうと、相続人間で揉め事が生じる恐れがあるような場合等々、いろんなケースがあるかと思います。相続においては、できる限り被相続人のご意思を反映させたいものですね。
 
こんなとき、遺言書の存在がとても重要です。被相続人は、 遺言で死後5年以内の期間を定めて、 遺産の全部又は一部について分割を禁止することができるのです。被相続人の意思表示による遺産分割の禁止は、生前は行えず、遺言でのみ指定することができます。残されたご家族のことを思い、一定期間の遺産分割禁止をお考えの際は必ず遺言書を残してくださいね。
 
ただ、遺言による遺産分割の禁止があっても、相続人全員の同意があれば遺産分割をすることができるんですけどね。
 

第 25 句 相続人 遺言隠して 欠格に

2014年6月23日(長岡俊行)
本来は相続人となるはずだった人でも、一定の不正を働くと、自動的に相続人から外されてしまうことがあるんですね。いわゆる「相続欠格」というもので、どういう場合に欠格になるのかまで、民法にしっかりと定められています。
 
まずは、遺産をもらう相手や同順位以上の相続人に対する殺人(未遂)が挙げられていますが、これはかなり特殊な事例でしょう。また、詐欺や強迫によって遺言を書かせたり取り消させたりした人なども、やはり問題外といえそうです。
 
ほかには、遺言書の偽造や変造、そして破棄または隠匿などが挙げられています。自分に有利なように遺言書を書き換えてしまったり、自分に不利な遺言書を隠してしまったり……気持ちはわからないでもないのですが、それをやったらおしまいです。
 
ちなみに、「不当な利益を目的」として遺言書を破ったり隠したりしたのでなければ欠格者にならないとされた裁判の例もありますので、誤って遺言書を燃やしてしまった場合などは欠格にならない可能性があります。
 
とはいえ、それが原因で相続人同士の関係が悪くなることも十分に考えられますので、やはり遺言書の扱いは慎重に行いたいものですね。
 

第 26 句 愛犬の 世話を頼んで 遺贈する

2014年6月26日(井出誠)
昨今、空前のペットブームですね。中でも犬をペットとして飼われているご家庭は非常に多いです。長年一緒に生活してきた愛犬は、家族以上の存在になっているなんて話も聞きますね。
 
さて、そんな犬達も生き物ですから、当然寿命が来ます。大切な愛犬をみとるのは非常につらいです。しかし、その逆はどうでしょう。愛犬を残して飼い主が先に旅立つ。愛犬のその後の面倒を見てくれる同居のご家族がいれば問題ないかもしれませんが、もし家族も親類もいないでペットと一緒に暮らしているお一人様だったとしたら……。
 
自らの死後、大切なペットへ遺産を残したいと考える愛犬家の方々は非常に多いです。しかし、どんなに可愛いペットでも、法律上動物は「物」として扱われてしまうため権利義務の主体となれません。故に遺産を相続する事はできないんですね。
 
こんなときは「負担付遺贈」という言葉を覚えておくとよいかもしれません。簡単にいうと、自分の死後、大切なペットの世話という「負担」を負ってもらうことを条件として、ペットの世話をしてくれる方へ一定の財産を「遺贈」するという方法です。
 
遺贈ですから遺言を残すことによって行うことができます。ただ、大切なペットの世話をお願いするわけですから誰でもよいというわけにはいきませんね。事前にこの人ならという人に依頼し、了解を得たうえで、遺言を書くことをオススメいたします。
 

第 27 句 親不孝 相続人から 廃除され

2014年6月30日(長岡俊行)
親に対して迷惑ばかりかけている子がいたとしたら、その子には遺産を残したくないと思ってしまうのが人情なのかもしれません。しかし、たとえほかの人にすべての遺産を譲るような遺言を作ったとしても、最低の取り分である遺留分は残ります。
 
このようなこともあってか、民法には、自分の意思で特定の人を相続人から外せる仕組みが定められています。具体的には、本人に対して虐待や重大な侮辱を加えた人や、その他の著しい非行があった人を、家庭裁判所に請求することによって相続人から廃除することになります。
 
もっとも、請求があれば必ず認められるものでもなく、やはりそこは家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。相続人から外して相続権を奪うのですから、それなりの理由が求められるのは当然のことといえるでしょう。
 
ちなみに、廃除の対象となるのは、「遺留分を有する推定相続人」に限定されています。なぜなら、遺留分のない兄弟姉妹については、遺言でそれ以外の人に遺産を渡してしまえば、結局は廃除されたのと同じことになるからなんですね。
 

第 28 句 海外で サイン証明 取得する

2014年7月3日(井出誠)
昨今「グローバル社会」などといわれております。老いも若きも海外に居を移すことは、一昔前よりだいぶハードルが下がったように思います。定年退職を機に海外移住を図る、リタイヤメントロングステイヤーの数も増えてきているようです。
 
さて、相続において、相続人の一人が海外在住なんて話も珍しくはありませんね。このようなケースでは、ただでさえ面倒な相続手続において一層手間が増えることでしょう。相続人が集まって遺産分割協議を行うことさえ難しいかもしれませんね。
 
遺産分割協議書を作成する際、不動産や預貯金の名義変更を前提とするならば、原則、相続人全員の押印及び印鑑証明書が必要となります。しかし、この印鑑登録制度というのは日本独自の方式ですので、海外では印鑑証明書なんて取得できません。では、いったい海外在住者の相続人はどうしたらよいのでしょうか?
 
こんなケースでは、「サイン証明」という制度がございます。海外の大使館・領事館では、印鑑証明の代わりとして、海外在住日本国籍者のご署名等を証明してくれる便利な制度がございます。これが、サイン証明又は署名証明といわれるものです。
 
この制度、その場でご本人がしたサインを証明してくれるものなので、代理人申請や郵送による申請は認められておりません。ですから、必ずご本人が大使館・領事館へ足をお運びくださいね。
 

第 29 句 検認は 戸籍そろえて 家裁まで

2014年7月7日(長岡俊行)
亡くなった人が自筆証書遺言を書いていた場合、その遺言書をそのまま銀行や法務局に持っていったとしても、名義変更等をすることはできません。自筆証書遺言が出てきたら、まずは家庭裁判所で「検認」という手続きをしなければならないんですね。
 
家庭裁判所では、偽造や変造を防止するために、相続人の立ち会いのもとで遺言書を確認します。ただ、あくまでも存在と内容の確認だけなので、検認を受けたからといって、その遺言が有効になるとは限りません。
 
遺言書を保管していた人や遺言書を発見した相続人が検認の請求をすると、家庭裁判所からすべての相続人に対して検認を行う日の通知がされます。その日に都合が悪ければ不参加でも構わないのですが、連絡は全員にしなければならないため、亡くなった人の相続人を確定させる必要があります。
 
ですから、少なくとも、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等と、相続人全員の戸籍謄本をそろえなければならないんですね。これに対して、公正証書遺言は検認の必要がないので、相続人の負担はだいぶ軽くなるわけです。
 

第 30 句 相続税 原則金銭 一括納付

2014年7月10日(井出誠)
人の死亡を原因として一定の財産を取得した個人に課される税金、それが相続税です。遺産相続において、相続税の課税対象となる財産が基礎控除額を超えている場合には、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税が必要となります。
 
相続税を課税される方が、期限までに納税しなかった場合は、いわゆる脱税行為ですね。延滞税や無申告重加算税が課されるだけでなく、悪質なケースでは逮捕され懲役刑なんて場合もございますのでご注意ください。
 
さて、その相続税の納付についてですが、金銭で一括納付するのが原則です。つまり、納期限内に全額を現金で支払う必要があるわけです。
 
しかし、納税額がかなりの額になってしまって全額は厳しいとか、相続したのは土地建物だけなので現金納付は厳しいなどといったケースももちろんありますね。そんなときは、一定の条件を満たすことで、全額ではなく分割して支払う「延納」や、相続した不動産などの現物で支払う「物納」といった納付方法の特例を受けることができますので、覚えておいてくださいね。
 

ブログから本が生まれました!


「相続を気軽に学べる解説書を」ということで、八王子の行政書士・社労士の井出さん(至誠法務労務サポート代表)と一緒にコツコツと書き溜めたブログが、1冊の本になりました。
 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。口語調の解説文が「わかりやすい!」と評判です。

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はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
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