第31句から第40句

第 31 句 遺言書 勝手に開封 過ち料

2014年7月14日(長岡俊行)
亡くなった人の自筆証書遺言については、まずは家庭裁判所で検認の手続きをしなければなりません。では、この検認をしないと、どうなるのでしょうか。
 
民法では、検認の請求をしなかった人に対して、「5万円以下の過料」という罰が定められています。「過料」というのは、「科料」や「罰金」とは異なり、刑罰ではありません。「あやまち料」と読んで「科料」と区別することもあります。
 
遺言書を家庭裁判所へ提出しなかった人のほかに、過料を払わされる可能性のある人として、検認を経ないで遺言を執行した人と、家庭裁判所以外で遺言書を開封した人が挙げられています。
 
つまり、見つかった遺言が封筒に入っていたら、絶対にその場で開けてはいけないんですね。
 
ただ、この決まりを知らずに遺言の入った封筒を開けてしまう人もけっこういるようです。そして、開封したからといって、遺言が無効になるわけではありません。
 
だからといって、見つけた遺言を一人でこっそり開けてしまうと、ほかの相続人からあらぬ疑いをかけられることにもなりかねません。やはり中身の確認は検認の日まで我慢してくださいね。
 

第 32 句 分割は 現物 換価 代償で

2014年7月17日(井出誠)
相続人が複数いる場合には、どの財産を誰がどの程度相続するかなどを話し合う必要がございます。これが遺産分割協議です。遺産分割協議の結果、各相続人にそれぞれ遺産が分配されていくわけですが、その分割方法は、主に3つございますので確認していきましょう。
 
まずは、現物分割です。読んで字のごとく現物を各相続人が相続します。例えば、この不動産は長男へとか、この預貯金は次男へ、といった方法です。現物で分けますので、各相続財産の権利関係が明確になりますね。
 
次に、換価分割です。相続した財産の一部もしくは全部を金銭に換えて、その金銭を分割する方法です。例えば、不動産が遠方にあり、どの相続人もその不動産の取得を希望しない場合などが考えられます。その不動産を売却して現金を分割するため、相続分もきっちり公平に分けられるかもしれませんね。
 
最後に、代償分割ですが、特定の現物を特定の相続人に取得させ、取得した相続人が他の相続人に対して、金銭等の財産を代わりに与える方法です。例えば、親と同居していた家を長男が相続し、長男は次男と三男に対して一定分の現金等を与えるような場合ですね。現在住んでいる不動産を売却しなくても済みますね。
 
どの分割方法が良いかは、相続する財産の種類によっても違ってきますので、しっかり話し合ってくださいね。
 

第 33 句 代襲で 祖父母の遺産 孫が継ぐ

2014年7月21日(長岡俊行)
親よりも先に子が亡くなってしまった場合など、本人よりも先に相続人となるべき人が亡くなっていることもあり得ます。このとき、亡くなった子に子供がいれば、つまり本人から見て孫がいれば、その孫が祖父母の遺産を受け継ぐことになるんですね。
 
この仕組みを代襲相続といい、孫も先に亡くなっていればひ孫が、ひ孫も先ならば……というように、理屈のうえではどこまででも続いていきます。ちなみに、相続欠格や相続人が廃除された場合にも、代襲相続が発生する可能性があります。
 
また、兄弟姉妹が相続人となる場合にも代襲相続が発生するのですが、こちらは一代限りで終了です。つまり、おい・めいまでしか続かないんですね。
 
一方、配偶者が先に亡くなっていた場合は、代襲相続で配偶者の子が相続人となることはありません。ですから、再婚した際の連れ子で養子縁組をしていない場合などは注意が必要です。
 
もちろん、配偶者の親、つまり義父母が代襲相続することもありませんので、そこはご安心……もとい、ご注意ください。
 

第 34 句 財産の 目録作って 頭を整理

2014年7月24日(井出誠)
財産目録、非常に堅い言葉です。莫大な財産を所有する資産家が作るものと考える方や、化粧箱に入った和紙の巻紙みたいなものをイメージされる方もいるかもしれませんね。
 
「家と少しの預貯金だけで、それほど財産のない自分なんかに関係ない」なんて言葉もちらほら聞こえてきます。
 
しかし財産目録は、それほど堅苦しいものでもないのです。立派な紙を用意する必要もなく、いつも使っているメモ用紙に書いたものでも、ご自身の所有する財産の内容が一覧になっていれば、それが財産目録です。
 
さて、ご自身の財産ですから、ご自身の頭の中にある程度は整理されていることと思います。ただし、預貯金が多数の銀行に分散されていたり、不動産・株・債権等を複数所有していたりすると、思い出すのに一苦労という場合もございます。一度、現状の財産をしっかり整理し、紙に書き出してみることで、ご自身の頭の中をすっきり整理することができますし、そろそろ遺言書を作成しようかなと思ったときにも、作っておいた財産目録が非常に役立ちます。
 
また、ご自身は財産を把握していても、ご家族が一切把握していないとなると、万一ご自身に何かあった場合、残されたご家族は一から郵便物等を頼りに財産探しをしていかなければなりません。残された相続人にとって、整理されている財産目録の存在は、それによって遺産の内容が一目でわかるため、非常にありがたい存在なんですね。
 

第 35 句 代襲は 子どもみんなで 一人分

2014年7月28日(長岡俊行)
ある人が亡くなった際に、子が先に亡くなっていて代襲相続が発生することがあります。このときに、孫が複数名いると相続人の数も変わってくるんですね。
 
例えば、子が2名であれば配偶者と合わせて3名が相続人だったところ、子のうちの1名が先に亡くなっていて、その子に3名の子がいたとしたら、生きている1名の子と配偶者、そして3名の孫で合計5名が相続人となります。
 
このような場合、先に亡くなっていた子の相続分を孫が引き継ぐことになりますので、ほかの相続人の相続分にはとくに影響がないんですね。
 
つまり、先ほどの例であれば、本来は配偶者が2分の1で子がそれぞれ4分の1ずつを相続するはずだったものを、子のうちの1名が先に亡くなっていますので、3名の孫が4分の1の相続分を均等に割って、12分の1ずつを代襲相続することになるわけです。
 
そのようなわけで、代襲相続が発生すると、法定相続分の計算が複雑になってくる傾向があるんですね。
 

第 36 句 遺言者の 気持ちを残す 付言事項

2014年7月31日(井出誠)
相続は揉めるものといったイメージを持たれる方は少なくありません。限られた相続財産の分け合い、時に奪い合い。そこに残された相続人それぞれのお気持ちが介在してくるわけですから、実際の遺産分割協議では、揉めるケースも多いわけです。
 
「私は、両親の介護をしていたんだから」とか、
「兄さんは父さんから多額の援助を受けていたんだから」とか、それぞれ言い分があるわけです。
 
そんな親族間での争いごとを避けるために遺言書を残されるケースが増えてきています。遺言書に相続人それぞれの相続分を書き記すとしても、その全てが法定相続分通りの相続割合を指定するわけではないですね。やはり遺言者としても、あの子には世話になったからとか、長男は事業に成功して財産も持っているからとか、まあ色々あるわけです。
 
遺言を残す際、そのような気持ちは、心にしまい込まず、しっかり遺言に書き記してください。遺言書には財産の分配比率等だけでなく、遺言者が相続人等へ残す最後の意思を書き記すことができます。これが「付言事項」です。
 
付言事項に法的拘束力はありませんが、遺言を残そうと思った理由や残された家族一人ひとりへの感謝の言葉、相続分に差をつけた理由など遺言者の最後の意思を書き記しておくことで、相続人それぞれが遺言者の意思を尊重し、無駄な親族間での相続争いを避けることにつながるかもしれませんね。
 

第 37 句 承認と 放棄の選択 一度きり

2014年8月4日(長岡俊行)
相続人が相続財産を受け取りたくない事情があるときには、家庭裁判所で相続放棄の手続き(申述)をすることができます。ここ数年、家庭裁判所では年間に15万件以上が受理されているようです。
 
(プラスの)財産よりも(マイナスの財産である)借金が多い場合などに相続放棄を選ぶのが一般的なのでしょうが、いったん放棄してしまったら、原則的には取り消すことができないんですね。
 
ですから、自分の親には借金しかないだろうと考えて放棄をしたのに、後から多額の財産が見つかって悔しい思いをすることも考えられるわけです。
 
反対に、放棄しないで遺産を受け継ぐ場合、つまり、相続を承認した場合にも、これを取り消すことはできないんですね。
 
こちらはもっと深刻で、承認した後に多額の借金が出てきたら、相続人の生活が激変してしまうこともあり得るわけです。
 
こういった問題を避けるためにも、自分の財産について日ごろから家族とよく話し合っておくことが大切なのかもしれませんね。仮に借金があって、その存在を打ち明けられないのであれば、遺言に書いておくのも一つの手かなと思われます。
 

第 38 句 葬式の 希望書いたが 読まれずに

2014年8月7日(井出誠)
自らが亡くなった際、葬儀や埋葬の方法等に関する希望をお持ちの方は多いかもしれません。宗教の違いや葬儀の規模に関してもまちまちです。昨今は家族葬や密葬を希望する方も多いようですが、そもそも葬式なんかやってくれるな、という希望もあるかもしれませんね。特定のご希望がある場合には、それらを遺言に残すと良いかもしれません。
 
しかし、葬儀や埋葬方法の希望を遺言書に記載しても、これらは「遺言事項」ではないので、法的拘束力は生じません。故に、遺言者が希望した葬儀方式以外でご家族が葬儀を行っても良いわけです。ただし、そこは遺言者の最後の希望ですから、「葬儀前に遺言書に目を通してくれれば」ご家族もその希望を尊重してくれるのではないでしょうか。
 
「葬儀前」というところがポイントですね。
 
通常ご葬儀の日程は、死亡日の翌日に通夜、その翌日に告別式なんてパターンでしょうか。もちろん、お坊さんや火葬場の都合、六曜の日付で友引なんかにぶつかってしまった場合など、ご葬儀の日付が後ろ倒しになってしまう場合も当然ありますが、それでも数日でしょう。ですから、遺言書の存在すら知られていなかった場合などは、葬儀前にご家族が遺言者の希望を知ることは難しいかもしれません。
 
死亡後、葬儀前に遺言を発見してもらう必要がありますので、生前に身近なご家族へ遺言の存在を明らかにしておく必要があるかもしれませんね。
 

第 39 句 三か月 経過で単純 承認に

2014年8月11日(長岡俊行)
相続放棄をするときには、原則的には相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。この3か月間は「熟慮期間」といわれ、放棄も承認もしないままこの期間が過ぎると、相続人はその相続について単純承認したものとみなされます。
 
つまり、プラスの財産もマイナスの財産も合わせて、すべての遺産を受け継ぐことになるわけです。ですから、亡くなった人の借金が問題にならない場合などは、そのままにしておいても大丈夫といえば大丈夫なんですね。
 
危ないのは、借金の影響が大きい場合です。この「3か月ルール」を悪用して、相続開始から3か月以上が経過するまで借金の存在を黙っているような業者もいるそうです。
 
ただし、このようなときでも、家庭裁判所が「借金の存在を知っていれば放棄していただろう」と認めた場合などは、相続開始から3か月が経っていても放棄できる可能性はあります。
 
また、借金の存在を調べるのに時間がかかってしまう場合などは、家庭裁判所に熟慮期間の延長を請求することもできます。
 
そうはいっても、借金があるのであれば、家族としては本人からきちんと教えてもらいたいものですよね。
 

第 40 句 相続を 気軽に学ぶ 川柳で

2014年8月14日(井出誠)
「相続」といった単語を目にすると、非常に堅く難しいイメージがあるかもしれません。
 
中には「相続」の話なんか縁起でもないと、敬遠する方もいますよね。
 
そもそも、「相続」のことなんて、法学部の学生が多少学ぶ以外には学校で習ったりもしませんので、法律やお金の知識を生業にしている方々以外は、なかなか触れる機会も少ない分野です。
 
しかし、誰しもに訪れる死、及び親類の死。これらにまつわる知識は非常に重要かつ大切なものであり、知らなかったが故に痛い目にあった又は損をしたなんて話もごろごろありますね。多くの方がいざ相続が発生してからバタバタと本を購入して読まれたり、友人知人に質問して曖昧で不正確な知識を得られたりすることが多いように思います。
 
一般の方で、普段から難解な法律書を読んだり、「相続」や「遺言」のセミナーに参加されたりするのは、ちょっとハードルが高いですよね。
 
気軽に他人のブログを読むように、数分でちょっとした「相続」や「遺言」の知識が身につく、そんな仕組みはないかなと思って始めたのが、この『相続川柳』です。
 
文字数は600字以内に抑えてあり、気が向いたときにアクセスしていただければ、数分で「相続」や「遺言」の知識に触れることができますので、これからも多くの方に読んでいただければ幸いです。
 

遺言・相続を「ざっくり」学びたい方へ


 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。

 語り口調の解説が、一般の方だけでなく、実務経験の少ない行政書士や、相続を業務としては扱わない社労士などからも好評です。  

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はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
中小企業の経営に役立つ情報を発信していきたいと思っているのですが……