第41句から第50句

第 41 句 相続の 限定承認 全員で

2014年8月18日(長岡俊行)
亡くなった人の財産と負債のどちらが多かったのかがはっきりしない場合などは、相続を単純承認するか放棄するか迷ってしまうのではないでしょうか。そんなときは「限定承認」を選ぶこともできます。
 
限定承認をすると、相続で得た財産の限度で返済などの義務を負うことになります。つまり、もらった分を超えてまで借金を返さなくてもよくなるんですね。もちろん、財産のほうが多かったら、余った分をもらうことができます。
 
この限定承認も、放棄と同じように、原則的には相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
 
ただ、やっかいなことに、限定承認は相続人全員が共同して行わなければならないんですね。ですから、相続人の一人が単純承認してしまったら、もう限定承認をすることはできないわけです。一方、放棄した人がいた場合は、その人は相続人でなかったものとみなされるので、残りの相続人全員で限定承認をすることができます。
 
限定承認をするときには、その時点で判明している遺産の目録を作らなければなりません。また、申述しているのが相続人全員であることを証明するために、亡くなった人の戸籍謄本等を出生から集める必要もあります。さらに、受理された後の手続きもけっこう大変です。
 
そんなこともあってか、限定承認はあまり利用されていないのが現実なんですね。
 

第 42 句 夫婦での 共同遺言 無効です

2014年8月21日(井出誠)
「おしどり夫婦」という言葉がございます。何をするにもいつでも一緒で仲睦まじい夫婦といったところでしょうか。家でも一緒、買い物にも旅行にも、どこでも一緒に出かけて趣味も一緒で……。まあ当然、最後は同じお墓に一緒に入るんでしょうけどね。
 
夫婦仲が良い。それはそれで結構なことなんですが、遺言だけは一緒にしないでくださいね。
 
民法には「遺言は二人以上の者が同一の証書で行うことができない」と共同遺言の禁止が規定されています。共同遺言、すなわち一つの遺言書に夫婦連名で遺言を残すようなことは認められていないんですね。
 
そもそも、遺言の効力は遺言者の死後に発生しますので、二人以上の人間が連名で遺言を残してしまった場合、一人は亡くなっても一人は生きているとなると、その遺言の効力発生において問題が出てしまいます。
 
また、本来遺言は自由に書かれるべきものです。しかし二人で同じ遺言を残そうとした場合、どちらかの意見が制約を受けてしまう場合が多々あるでしょう。故に、どんなに仲が良い夫婦でも、それぞれが自らの意思で、別々に遺言を残す必要があるんですね。
 
老後、「私達もそろそろ遺言書でも作成しておかないとねぇ」と夫婦で話し合い、不動産は長男に、預貯金は長女に……とひとつひとつ決めていき、それを一枚の自筆証書遺言に一緒に記入、さあ書きあがったからと最後に夫婦連名で署名押印。なんてことはやめてくださいね。
 

第 43 句 未成年 遺言できます 十五から

2014年8月25日(長岡俊行)
遺言に関する本をよく見かけるようになってからしばらく経ちますが、現在でも、一般的には「遺言は死が迫ってから作るもの」というイメージが強いのではないでしょうか。
 
もちろん、元気なうちでも遺言をすることはできます。では、何歳からできるのかというと、これは民法にきっちりと定められていて、ずばり15歳からなんですね。ですから、15歳以上であれば未成年でも遺言をすることができるわけです。
 
ところで、ヨーロッパの一部などでは、「大人なら遺言を書いていて当然」といった考え方もあるようです。日本はそんなことないですよね。これは、文化の違いだけでなく、日本は戸籍制度がしっかりしていて遺言がなくてもなんとか相続手続を進められるからだともいわれています。
 
とはいえ、相続人の関係によっては、遺言がないと手続きがかなり面倒になることも事実です。ですから、心当たりのある方は、積極的に遺言の制度を活用するとよいのではないでしょうか。
 
なにしろ15歳からできるのですから、少なくとも「高齢者」といわれる方々であれば、「早過ぎる」ということはないと思うんですよね……。
 

第 44 句 相続人 いなけりゃ遺産は 法人に

2014年8月28日(井出誠)
「おひとりさま」という言葉を耳にすることがあるかもしれません。一生独身の方もいれば、子供がいない夫婦で妻や夫に先立たれて、今は「おひとりさま」という方もいるでしょう。このような場合、既に親だけでなく兄弟も他界していたり、そもそも一人っ子で兄弟もいないケースなどでは、相続人がいないことになりますね。
 
相続人が一人もいない場合、残された遺産はいったいどうなるのでしょうか?
 
ある人が財産を残したままお亡くなりになると、その財産は基本的には相続人が引き継ぎます。しかし引き継ぐ相続人が一人もいない場合、その財産は「相続財産法人」という「法人」になります。法人というと会社なんかをイメージしがちですが、「法」律によって権利義務の主体とされるという意味で「法人」なんですね。
 
そして、この「相続財産法人」の管理は誰が行うかといえば、家庭裁判所によって選任される相続財産管理人が行うこととなります。ほとんどが弁護士さんです。
 
相続財産管理人は遺産を管理し清算するのが仕事です。まずは本当に相続人がいないかどうか確認します。その後、被相続人が借金などを抱えていた場合は債権者に弁済したり、遺贈などがあれば、それらを履行したりします。諸々清算後に遺産が残った場合には、最終的には国庫に帰属、いわゆる国のお金となるんですね。
 

第 45 句 認知症 医師二人診て 遺言する

2014年9月1日(長岡俊行)
遺言をするには、その能力(意思能力)が必要だとされています。「意思能力」なんて聞くと難しそうな感じもしますが、ようは「(他人の言いなりではなく)自分の判断で遺言の内容を決められるかどうか」ということです。
 
逆にいうと、自分で判断する能力がないと、遺言はできないんですね。民法では、15歳未満の人に加えて、成年被後見人にも遺言能力がないとされています。「成年被後見人」とは、認知症など精神上の障害によって常に判断能力がないと裁判所に認められた人のことです。
 
15歳未満の人は、15歳になるまで待つしかありません。これに対して成年被後見人は、一時的に判断能力が回復することもあり得ます。そのようなときに医師2人が立ち会って判断能力があることを証明すれば、遺言をすることができないわけでもないんですね。
 
ちなみに、認知症でも成年被後見人になっていない人、つまり、成年後見の申し立てがされていない人については、医師2人の立ち会いは必要とされていません。とはいえ、認知症の人がした遺言に関する裁判の例は豊富にありますので、それだけもめる可能性が高いのも事実です。
 
そう考えると、やはり遺言は元気なうちにしておいたほうがよいでしょうね。
 

第 46 句 遺留分 減殺請求 期限有り

2014年9月4日(井出誠)
被相続人の死亡により、相続が開始されるわけですが、まず最初に行うべきは遺言書の有無の確認作業です。遺言書が見つかり、相続分の指定がなされていれば、基本的にはその遺言書に書かれている通りに、各相続人へ指定された相続財産が分配されることになりますね。
 
しかし、一定の相続人に対しては、遺言によっても侵すことのできない最低限保障された権利である「遺留分」がございますので、これを侵害した相続分の指定がなされていた場合には、遺留分減殺請求権という権利を行使することができるわけです。
 
この遺留分減殺請求権ですが、いつまでに行使すればよいのでしょうか?
 
法律では、「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年」以内に行使することとなっております。また、遺留分の侵害をだいぶ後に知ったとしても、「相続開始の時から10年を経過」してしまったら権利を行使することはできないとされています。いつでもOKというわけではないんですね。
 
また、遺留分減殺請求は、相続放棄等のように家庭裁判所へ申し立てする必要はなく、相手方である他の相続人等へ「遺留分減殺請求します」と意思表示をすればいいだけなんですね。電話でも直接お会いして伝えてもいいのですが、やはり、権利を行使したという客観的証拠が必要な場合には、内容証明で遺留分減殺請求権を行使するといいかもしれませんね。
 

第 47 句 分割の 協議はできぬ 未成年

2014年9月8日(長岡俊行)
未成年でも15歳になれば遺言をすることができます。つまり、自分の意思で自分の財産の処分方法を指定できるわけです。しかし、逆に遺産をもらう場合は、その分割協議で自分の意思を主張することができないんですね。
 
これは、未成年者が一人ではローンを組んだり古本を売ったりできないのと同じ理屈です。ただ、一般的な売買なら親などの法定代理人が同意すれば契約を進めることもできるのですが、遺産分割協議だと、そうもいかない場合があるんですね。
 
例えば、父親が亡くなって妻と未成年の子が遺産を受け継ぐとしたら、財産を妻と子で分けることになります。つまり、妻が多くもらえばそれだけ子の分が少なくなるわけです。このように「利益相反」が生じる場合は、妻が子の代理をするわけにはいきません。
 
このような場合は、子の意思を代理する者として、原則的に「特別代理人」が必要になります。そして、特別代理人は家庭裁判所に申し立てて選任してもらわなければなりません。たとえ法定相続分どおりに分けるときであってもです。
 
特別代理人は、親と子の利益が相反するときはもちろん、未成年の子同士の利益が相反するときなどにも必要となります。いくら未成年でも、本人の相続分を親が勝手に決めることはできないんですね。
 

第 48 句 欠格や 廃除はいいが 放棄ダメ

2014年9月11日(井出誠)
被相続人が死亡した場合、その者に子がいれば、子は第一順位の相続人となります。
 
しかし、親の死亡以前に子供が亡くなっていた場合はどうでしょう。もし、この子供に子供がいれば、要は被相続人にとってのお孫さんがいらっしゃれば、このお孫さんが「代襲相続」することになります。同じように、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合にも「代襲相続」は認められています。
 
一般的に「代襲相続」は相続人たる者の死亡のみを原因に行われる制度と思われている方もいらっしゃいます。しかし、死亡のみならず、「相続廃除」をされた場合や「相続欠格」にあたる場合などで、相続人としての権利を失った場合にも「代襲相続」が認められるんですね。
 
被相続人の子供は、生前、被相続人に対する虐待や著しい非行を行って相続人から廃除された場合などでも、その子、要は被相続人の孫には一定の相続財産が代襲相続として引き継がれていくわけです。
 
ここで、「相続廃除」や「相続欠格」と似た言葉で、「相続放棄」というものがございます。「相続放棄」とは、私はプラスの財産もマイナスの財産も一切相続致しませんと裁判所に申し立てることですが、この「相続放棄」によって相続人としての権利を失った場合には、「代襲相続」は認められておりませんので、お間違えのないように。
 
しかし相続に出てくる言葉って似たような言葉が多いですよね。
 

第 49 句 認知症 分割協議に 後見人

2014年9月15日(長岡俊行)
認知症などによって成年被後見人(被後見人)となると、一人で有効な契約を結べるのは日用品の買い物くらいに限られてしまいます。ですから、預貯金を下ろしたり施設の入所手続をしたりするときには、成年後見人(後見人)の同意や代理が必要になります。
 
もちろん、遺産分割協議を行うときにも、成年後見人が代理することになるんですね。そして、原則としては、成年後見人は被後見人の法定相続分を主張します。
 
ただ、親族が成年後見人になっている場合には注意が必要です。例えば、夫が亡くなり、妻と子が遺産を分割するときに、子が母親の成年後見人になっていたとしたら、実質的には、子が一人で分割案を考えることになってしまいます。
 
自分の分を多くしたら母の分が少なくなる……つまり、利益相反の関係になるんですね。
 
このような場合、家庭裁判所に申し立てて母のために特別代理人を選任してもらいます。また、成年後見監督人がいれば、その人が母の代理をすることになります。
 
認知症であってもまだ成年後見人がついていなければ、代理人なしで手続きを進められないこともありません。ですが、後からトラブルに発展する心配はあります。そのため、遺産分割協議をきっかけに成年後見の申し立てをする人もいるようです。
 

第 50 句 香典は 遺産分割 対象外

2014年9月18日(井出誠)
お通夜やご葬儀の際、一般的には不祝儀袋に包んだ「香典」を持参することになりますよね。
 
社会的慣習である「香典」は、宗派によっても異なりますが、表書きには御霊前と書かれているものがオーソドックスですね。
 
御霊前ですから、線香や花の代わりに死者の霊前に供える金品ということであり、故人とおつき合いのあった方々から故人への贈り物であると考える方も多いかもしれません。
 
そうすると、この「香典」、故人の相続財産に含まれることとなり、遺産分割協議を経て各相続人が相続するということになるのでしょうか? そもそも香典はいったい誰に帰属するものなのでしょうか?
 
「香典」が誰に帰属するかといったことは、実は法律には記載がありません。
 
しかし、多くの判例では「香典」は、葬儀等の参列者から喪主(祭祀継承者)になされた贈与であると解釈されております。
 
もちろん「香典」は、お世話になった故人への感謝の気持ちとして贈るといった性質がありますが、その一方で、葬儀等の費用負担の軽減という趣旨で贈られるものでもありますので、一般的に葬儀等の費用負担者たる喪主(祭祀継承者)への贈与という考え方になるんですね。
 
それ故に、「香典」は故人の相続財産には含まれないということになりますので、遺産分割協議の対象とはなりません。ご注意ください。
 

ブログから本が生まれました!


「相続を気軽に学べる解説書を」ということで、八王子の行政書士・社労士の井出さん(至誠法務労務サポート代表)と一緒にコツコツと書き溜めたブログが、1冊の本になりました。
 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。口語調の解説文が「わかりやすい!」と評判です。

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はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
中小企業の経営に役立つ情報を発信していきたいと思っているのですが……