第51句から第60句

第 51 句 遺言でも 後見人には あげられぬ

2014年9月22日(長岡俊行)
成年後見人は、認知症で判断能力が欠けてしまった人の財産管理を手伝います。年金の振り込まれる口座から預貯金を下ろし、日用品を買うための費用を本人に渡したり、本人に代わって施設の利用料を支払ったりすることは、成年後見人の代表的な役割といえるのではないでしょうか。
 
また、本人を代理して介護事業者との契約を結ぶことなどもできますが、さすがに遺言の作成まで代理することはできません。
 
成年後見人の就いている人、つまり成年被後見人であっても、一時的に判断能力が回復していることを2名の医師が証明できれば、遺言をすることは可能です。ただし、成年後見人(とその配偶者や直系卑属)の利益になるような遺言は、無効とされてしまうんですね。
 
本人のために財産管理をする成年後見人に対して、必要以上に本人の財産を与えるような行為は許されない、ということでしょうか。
 
成年後見人に対してお礼をしたい気持ちもわからなくはないのですが、仕事内容や本人の財産状況を考慮して家庭裁判所が適正な報酬額を決めていますので、そこは納得してもらいたいところです。
 
ちなみに、本人の配偶者や子などが成年後見人である場合は、その人たちは相続人にもなり得ますので、遺贈をしても問題はないんですね。
 

第 52 句 遺言書を 実現するのが 執行者

2014年9月25日(井出誠)
相続において、遺言書がある場合、遺言者の最後の意思である遺言書の内容を実現する人間が必要になってきます。
 
遺言書の内容を実現するとは、例えば、銀行口座を解約して各相続人に分配したり、不動産や車・株などの名義変更の手続きなど進めることをいいます。
 
いくら有効な遺言書があったって、誰かが動かなければ手続きは一歩も進みませんからね。
 
これらの手続きですが、もちろん相続人であれば行うことができます。実際、相続人が粛々と進めるといったイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし相続財産ごとに相続人のハンコが必要になったり、そもそも相続人が複数いたりするとそれぞれの利害が対立したりして、なかなかハンコがもらえず手続きが前に進まないなんて話もよくありますね。
 
こんなときは、遺言執行者が指定されていると便利です。
 
遺言執行者とは、その名の通り、遺言の中身を執行していく人のことですが、もう少ししっかり説明すると、民法では、遺言執行者は相続人の代理人とみなされているため、財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利と義務を負うとされています。
 
遺言執行者はあらかじめ遺言書で指定しておくこともできますし、遺言書で指定されていなければ家庭裁判所に選任の申し立てを行うこともできます。
 
また、遺言による子の認知及び相続人の廃除とその取り消しに関しては、遺言執行者の存在が不可欠ですので、覚えておいてくださいね。
 

第 53 句 普通遺言 自筆に公正 秘密もか

2014年9月29日(長岡俊行)
「普通の方式」による遺言には3種類ありまして、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に加えて、「秘密証書遺言」というものがあるんですね。
 
秘密証書遺言をするときは、遺言を書いた証紙を封筒に入れて封印をして、公証人と2名の証人に確認してもらいます。このとき、公証人も証人も中身を見ることはなく、単に「封筒の中に遺言が入っている」ということを確認するだけです。
 
つまり、内容は秘密にしつつ、遺言の存在を確かなものにできるわけです。
 
ちなみに、封筒に入れる遺言書については、自筆証書遺言のように手書きでなくても構いません。また、他人が代筆したものでもよいとされています。本人が署名押印をして、同じ印鑑で封印をしたうえで、中に入っているのが自分の遺言だと公証人と証人に伝えればいいんですね。
 
ただ、公証人が中身を確認していませんので、内容に不備があって相続人が苦労する可能性はあります。また、検認の手続きもしなければなりません。ですから、相続手続にかかる手間だけを見たら、相続人にとっては自筆証書遺言と大差ないんですね。
 
そのようなこともあってか、秘密証書遺言はほとんど活用されていないのが現実のようです。
 

第 54 句 執行に かかる費用は 遺産から

2014年10月2日(井出誠)
遺言の内容を実現していく人、それが遺言執行者です。遺言執行者は、相続開始後粛々と手続等を進めていくことになります。これには一定の期間と労力がかかりますよね。
 
相続人の中の一人が遺言執行者に指定され又は選任されている場合ならまだしも、相続人以外の方が仕事として遺言執行者の受任をした場合には、当然それに相応の報酬が必要になるでしょう。このような場合、遺言の執行に要した費用は誰が負担すべきなんでしょうか?
 
民法には、「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする」という規定がございます。当然といえば当然かもしれませんが、遺言者の残した相続財産の中から支払われることになります。
 
さて、もう一つ気になるのが、その報酬額。この遺言執行にかかる報酬の額は、いったい誰が決めるべきものなのでしょうか?
 
この報酬額の決定方法は、遺言書に報酬額の記載がある場合とない場合で変わってきますのでそれぞれ見ていきましょう。
 
まず、遺言書にその報酬の額が記載されている場合です。遺言者が遺言書作成時に遺言執行者と合意した報酬額が記載されていれば、それに従うことになります。
 
次に、遺言書に報酬額が書かれていない場合、遺言執行者が相続人との協議の上で報酬額を決めることになります。相続人との協議が整わないのであれば、最後は家庭裁判所の審判で報酬額を決めてもらうこととなります。
 

第 55 句 公正証書 遺して家族に 感謝され

2014年10月6日(長岡俊行)
公正証書遺言は、その名のとおり公正証書による遺言(遺言公正証書)です。
 
法律では、本人が口伝えした趣旨を公証人がその場で記録して、本人と2名の証人に内容を確認させるように決められています。といっても、実際には、あらかじめ公証人と打ち合わせをしておき、当日は公証人が用意しておいてくれた証書を証人と一緒に見ながら読み聞かせをしてもらうのが一般的なようです。
 
ですから、いきなり公証役場に行っても、その場で遺言を作るのはまず無理なんですね。
 
公証役場に何度か足を運び、それなりの手数料を払って作成してもらうのですから、家庭で費用をかけずに作れる自筆証書遺言に比べると、ずいぶんと面倒なようにも思えます。印鑑も原則として実印でなければなりませんし。
 
とはいえ、法律の専門家である公証人に相談ができますので、内容に不備のある遺言が作られる可能性はきわめて低くなります。また、原本は公証役場で保管されますから、偽造だけでなく紛失の心配もご無用です。
 
そして、相続開始後に検認の手続きがいらないのは、この公正証書遺言だけなんですね。検認不要につき戸籍の収集もかなり省略できるうえ、信頼性が高いので大抵の手続きは順調に進められます。ですから、公正証書遺言があると、相続人の負担が一気に軽くなるわけです。
 

第 56 句 祖父母へは 両親双方 いない時

2014年10月9日(井出誠)
相続においては、配偶者は必ず相続人になりますよね。
 
子供も第一順位の相続人ですから、相続放棄したり、廃除されたりする以外は当然相続人となります。子供がいない場合に第二・第三順位の方へと相続人となる順位が移行していくわけです。被相続人に配偶者と子供がいたというパターンが一番シンプルな相続といえるかもしれません。
 
さて、お子さんがいないケースを見てみると、相続人となるのは、その配偶者と第二順位の相続人である被相続人(亡くなった方)のご両親ということになります。ご両親ですから父と母の二名ですね。ただ何らかの理由で既にご両親はお二人とも他界していたとしたら、この相続人となる権利は被相続人の祖父母へと移っていくわけです。父方母方の祖父母がご健在であれば、その四名が相続人となります。
 
ここで、被相続人のご両親のうち、父は既に亡くなっているが母は存命である場合はどうでしょうか? 母は当然相続人になりそうですが、存命であれば父が相続したであろう相続人としての権利は父方の祖父母へと移るのでしょうか? 多少ややこしいところですね。
 
このケースで、相続人となるのは、配偶者と被相続人の母親です。被相続人のご両親双方がお亡くなりになっている場合に限って祖父母は相続人となるんですね。
 

第 57 句 特別の 遺言 半年 のみ有効

2014年10月13日(長岡俊行)
遺言には「普通の方式」だけでなく「特別の方式」もあります。「普通の方式」とは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つのことです。
 
それに対して「特別の方式」には、「死亡の危急に迫った者の遺言」「伝染病隔離者の遺言」「在船者の遺言」「船舶遭難者の遺言」の4つがあるんですね。
 
大まかにいうと、「死が迫っている人」と「社会から隔絶されている人」のための特例です。
 
いずれの場合であっても、死の急迫や社会からの隔絶という状況が解消して、普通の方式で遺言ができるようになった時点から6か月が経って遺言者が生きているときは、特別の方式で作った遺言はその効力を生じなくなります。
 
ですから、作った遺言の内容を実現したいのであれば、6か月以内に普通の方式で作り直さなければならないんですね。
 
実際に特別方式の遺言をする人は少ないようですが、事故や病気でいきなり死亡の危急が迫る可能性はだれにでもあるでしょう。その際に特別方式の遺言をするのであれば、3名以上の証人が立ち会わなければなりません。
 
このとき、公正証書遺言と同じで推定相続人等は証人になれませんので、念のために覚えておいてくださいね。
 

第 58 句 寄与分は 相続人のみ 主張可能

2014年10月16日(井出誠)
相続には寄与分というものがございます。「寄与」とは、人や社会の役に立つとか貢献するという意味です。このようなことから相続においての「寄与分」とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人と特に貢献していない他の相続人とのバランスを保つため、貢献した相続人に対して一定の評価をし、その分の相続財産を加算して相続させる仕組みです。相続において公平性を保つ趣旨から認められている制度と言えるでしょう。
 
代表的な寄与としては、労務の提供・財産の給付・療養看護があります。被相続人が生前行っていた事業に長男が無償で協力していたケースや、一緒に事業を行っていなくても、被相続人の事業の資金繰りが厳しいときに長男がかなりの資金提供をして事業が持ち直した様なケースが考えられます。
 
一方、評価が難しいのが療養看護の寄与についてです。私は一時期親の介護をしたからとか頻繁に見舞いに行ったからと、寄与分を主張するケースも見受けられますが、そもそも親子には扶養義務がありますね。親が病気になれば一定の世話をしたり見舞いに行くのは家族として当たり前のことです。親の介護の為に仕事を辞めて24時間365日介護をしていたとなれば話は別でしょうけどね。
 
ちなみに寄与分は相続人にのみ認められた制度ですので相続人以外の者がいくら寄与したと主張しても寄与分を認められることはないんですね。
 

第 59 句 遺言の 証人なれず 相続人

2014年10月20日(長岡俊行)
自筆証書遺言を除いて、遺言をするときには証人の立ち会いが必要になります。代表的なのは公正証書遺言でしょう。公正証書遺言については、法律で「証人2人以上の立会いがあること」と決められています。
 
この証人には、欠格事由というのも定められているんですね。
 
まずは未成年者。これは判断能力の問題でしょうか。未成年者と同じ「制限行為能力者」である成年被後見人等についてはとくに決まりがありませんが、後から問題になる可能性は高そうです。
 
次に、推定相続人や受遺者といった、遺言者から遺産をもらう人。そして、その人に近い親族も挙げられています。遺言をするときに同席している人が、遺言の内容に影響を与えてしまうかもしれませんからね。
 
さらに、公証人の親族や書記なども挙げられているのですが、このへんが問題になることはまずないでしょう。
 
やはり気をつけなければならないのは、自分に近い親族でしょうか。家族と話し合って遺言の内容を決めるのは自由なのですが、実際に遺言をするときには、家族は席を外すのが原則なんですね。
 
とはいえ、遺言の証人なんて友人には依頼できないと考える方も多いでしょう。だからといって、素性のわからない人に頼むわけにもいきません。
 
そういった事情で、弁護士や行政書士などの専門家が証人も務めることが多くなるわけです。
 

第 60 句 寄与分が 決まらなければ 家裁まで

2014年10月23日(井出誠)
遺産分割において、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人に対しては「寄与分」という制度がありますね。さて、この寄与分の額や割合は、いったい誰が決めてくれるのでしょうか?
 
民法では、まず、共同相続人の協議で定めるとありますので、相続人が遺産分割協議をする際にみんなで話し合って「寄与分」の額や割合を決めることとなります。
 
「寄与分」、簡単に言えばその分を多く相続できるということですから、他の相続人からすればその分の相続割合が減るということになります。なかなか一筋縄ではいかない話し合いになりそうですね。
 
例えば、ある相続人が、寄与分を主張します。金額的に明確な寄与であれば話は早いでしょうが、労務の提供や療養看護の話になりますとそうもいきません。要は「私はこんなにも苦労したんだ」という主張になります。
 
この苦労、実際のところご本人しかわかりませんので、数字的な評価は非常に難しい上に、ご本人とそれ以外の相続人との間では、苦労に対する温度差が必ず出ることでしょう。故に、寄与分についての話し合いというものは、結構まとまらないケースも多いようです。もっと言うと寄与の評価で揉める分割協議は非常に多いんですね。
 
そのようなことから、相続人同士の話し合いでまとまらなかった場合は、家庭裁判所に対して寄与分についての調停を申し立てることになります。そして、その調停でもまとまらなければ、審判となるんですね。
 

ブログから本が生まれました!


「相続を気軽に学べる解説書を」ということで、八王子の行政書士・社労士の井出さん(至誠法務労務サポート代表)と一緒にコツコツと書き溜めたブログが、1冊の本になりました。
 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。口語調の解説文が「わかりやすい!」と評判です。

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はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
中小企業の経営に役立つ情報を発信していきたいと思っているのですが……