第61句から第70句

第 61 句 新しい 遺言が優先 矛盾点

2014年10月27日(長岡俊行)
遺言は人生で一度だけしかできないものだと思っている人もいるようですが、実際のところ、遺言ができる回数には制限がありません。ですから、気が変わったときには自由に書き直すことができるんですね。
 
ただ、そうなってくると、遺言者が亡くなったときに複数の遺言が存在することもあり得るわけです。
 
例えば、「1,000万円を長男に」と指定された公正証書遺言とは別に、「1,000万円を妻に」と指定された自筆証書遺言が出てくることも考えられます。
 
このとき、遺産から2,000万円以上を用意できれば、それぞれに1,000万円を相続させることができるでしょう。しかし、遺産が2,000万円よりも少ない場合は、2つの遺言内容を同時に実現することができなくなってしまいます。このような場合はどうなるのでしょうか。
 
じつをいうと、これはけっこう単純な話で、とにかく「日付が新しいもの」が優先されるんですね。ちなみに、遺言書の方式に優先順位はありません。ですから、公正証書遺言よりも新しい自筆証書遺言があったら、そちらが優先されることになるわけです。
 
このような事情もあるので、正確な日付の書かれていない自筆証書遺言は無効になってしまうんですね。
 

第 62 句 認知症 なる前 任意の 後見を

2014年10月30日(井出誠)
成年後見という言葉を耳にする機会が増えてきたかと思います。昨今、非常に関心が高い分野ですね。
 
さて、誰でも歳を重ねるごとに物忘れが多くなってきたなと感じることがあるかもしれません。これが年々ひどくなり、次第に物事を判断する能力が衰えて、ある日突然、認知症と言われるような状態になってしまったら、ご自身の財産や年金をしっかり管理できますか? 介護が必要になった際、ご自身で介護認定の申請や介護事業者との契約を結べるでしょうか? なかなか難しそうですよね。
 
そんなときに大変役に立つのが成年後見制度です。判断能力が衰えたり失われた方の財産管理と身上監護を成年後見人等がサポートしてくれます。
 
この成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類がございます。
 
簡単に説明すると、前者は既に判断能力が衰えたり失われた方を対象とし、裁判所の手続きによって後見人等を選任してもらう制度です。
 
それに対して、後者は当事者間の契約によって、自らが元気なうちに将来サポートしてくれる任意後見人や代理権の内容を選ぶ制度です。いざ認知症になってしまった場合には事前に自分で結んだ契約によって自らが選んだ任意後見人がサポートしてくれる仕組みになっております。やはり、後見人は自分で選んだ信頼できる方にお願いしたいものですね。
 
将来に備える「老い支度」はお元気なうちに考えておきましょう。
 

第 63 句 遺言を 撤回するため 遺言す

2014年11月3日(長岡俊行)
遺言をした後に、気が変わることもあるでしょう。そのような場合、遺言をした本人、つまり遺言者は、いつでも遺言を撤回することができるんですね。
 
この遺言の撤回は、原則的には新しい遺言ですることになります。混乱を避けるためにも、「何年何月何日にした遺言を撤回する」といった感じで、日付を特定して撤回するとよいのではないでしょうか。
 
このとき、撤回する遺言の方式には、とくに決まりがありません。ですから、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能です。
 
また、遺言の全部だけでなく、一部だけを撤回することもできます。「自宅の土地を妻に、建物を長男に相続させる」という内容の遺言があったときに、長男に関する指定だけを撤回するようなこともできるわけです。
 
ちなみに、「撤回する」などの文言がなくても、古い遺言と新しい遺言に抵触する部分がある場合、つまり両方を実現することが不可能な場合は、新しい遺言で古い遺言を撤回したものとみなされます。
 
また、遺言で「自宅を妻に」と指定しておきながら、その不動産を売ってしまった場合なども、遺言のその部分を撤回したものとみなされます。
 
つまり、遺言をした本人はその内容に縛られることがなく、生きている間は自由に財産を処分することができるんですね。
 

第 64 句 認知症 なった後なら 法定後見

2014年11月6日(井出誠)
もしご自身が認知症等にかかり、物事の判断能力が不十分になってしまったら、財産管理や介護に関する契約をご自身で行う事はなかなか難しいですね。
 
認知症等により判断能力が不十分になった方又は判断能力を失ってしまった方に対し、財産管理や身上監護の面から支援するのが「成年後見制度」ですが、既に認知症を発症し、判断能力が不十分な方であれば「法定後見制度」を利用していただくこととなります。配偶者等の申立権者が家庭裁判所へ後見等開始の審判を申し立て、成年後見人等を選任してもらう形です。ご自身がこの人に私の後見人になってもらいます、と契約を交わす「任意後見制度」とは、この点が異なります。
 
さて、この法定後見制度ですが、その対象者の判断能力の程度により、3つの類型が用意されています。
 
簡単に説明してみますと、1.判断能力を常に欠く人は「後見」類型です。日常的な買い物ですら一人では不安がある方です。2.判断能力が著しく不十分な人は「保佐」類型です。日常的な買い物はできても、重要な財産行為は一人では無理な方です。3.判断能力が不十分な人は「補助」類型です。重要な財産行為ができるかできないか危惧があるためサポートが必要な方です。なかなか分かりづらいですね。
 
成年後見制度には、本人の自己決定権の尊重と現有能力の活用という大前提がありますので、一律ではなく、能力ごと・類型ごとにサポートする側の支援範囲も変わってきます。
 

第 65 句 遺言書 本人破って 撤回す

2014年11月10日(長岡俊行)
自分に不利な内容の書かれた遺言書を見つけた相続人が、思わずそれを破り捨ててしまったら……その相続人は相続財産を受け取る資格を失う可能性があります。いわゆる「相続欠格」というやつです。
 
これに対して、遺言書を破ったのが遺言をした本人だった場合には、わざとであろうがなかろうが、相続欠格になることはあり得ません。そもそも相続人になれませんからね。
 
このように、遺言者が意図的に遺言書を破棄した場合は、「その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす」と民法に定められています。
 
また、遺贈の目的物を故意に破棄したときも、同じように遺言を撤回したものとみなされます。例えば、家宝の壺を長男に相続させる遺言をしていたのにそれをたたき割ってしまった場合などが、これに当たるのではないでしょうか。
 
遺言書の破棄に話を戻しますと、自筆証書遺言であれば、本人が撤回のために破り捨てるのは、物理的には簡単なことといえるでしょう。これに対して公正証書遺言の場合は、遺言公正証書の原本は公証役場に保管されていますので、それを破棄することはできません。
 
ちなみに、手元にある正本や謄本を本人が破り捨てても、撤回とはみなされないようです。
 
そのようなわけで、公正証書遺言を撤回したいときは、原則に従って新しい遺言で撤回するのが無難なのではないでしょうか。
 

第 66 句 4つある 成年後見 制度理念

2014年11月13日(井出誠)
「制度理念」なんとも堅い言葉ですが、制度を理解する上でその基本理念を知っておくと、何かと便利です。
 
物事の判断能力が欠けている又は不十分な人を「保護」する制度それが「成年後見制度」です。故に【本人保護の理念】は非常に重要な基本理念のひとつです。ただ、本人保護のみに偏った考え方ですと、非常に硬直的な制度になりかねませんし、時には成年被後見人の権利侵害になってしまうケースも考えられますのでご注意ください。
 
さて、成年後見制度には【本人保護の理念】以外に3つの大切な理念がございます。
 
1つ目は、【自己決定権の尊重】です。その方が望む暮らしを送ることができるように、サポートする側がその方の意見を尊重して支援していくという意味です。
 
2つ目は、【現有(残存)能力の活用】です。判断能力が衰退していても、未だその方の持っている能力を最大限に活かし、その人らしい生活を送らせてあげることができるような支援を心がけるという意味です。
 
3つ目は、【ノーマライゼーション】です。障害の有無にかかわらず、差別されることなく地域において普通の生活が送れるように支援していくという意味です。
 
これら3つの理念と【本人保護の理念】をうまく調和させ、成年被後見人のサポートをしていくことが「成年後見制度」に関わる上で非常に大事なことだと言われていますので、覚えておいてくださいね。
 

第 67 句 生きている 親の財産 放棄不可

2014年11月17日(長岡俊行)
借金が多くて相続財産がマイナスだった場合などに、相続人が相続放棄を選択することが考えられます。また、「自分には十分に財産があるので、遺産は他の相続人で分けてほしい」という思いで放棄を選択する人もいるのではないでしょうか。
 
後者の場合は、遺産分割協議で相続分をゼロにすれば済む話でもあるのですが、放棄ができないわけではありません。
 
ただ、相続の放棄ができる期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」と民法に定められているので、注意が必要です。
 
この条文(第915条)は、「3か月以内に放棄をしないと手遅れ」という説明によく用いられますが、同時に「放棄ができるのは相続の開始を知った時点から」ということも読み取れます。
 
つまり、相手がまだ生きている間には、その人の死亡によって将来に発生する相続を放棄することはできないんですね。
 
ですから、「(これから発生する)誰々の相続に関しては相続分を主張しません」といった誓約書などを作って実印をついたとしても、法律的には無効になってしまうわけです。
 
そのようなわけで、相続の放棄をしたい場合には、相手が亡くなってからの3か月間でするしかないのが現実なんですね。
 

第 68 句 青年の 貢献ではない 成年後見

2014年11月20日(井出誠)
「成年後見をご存じですか?」といった質問に「ボランティアかなにか」と答えた方がいらっしゃいました。この方の頭の中では「せいねんこうけん」を「青年・貢献」と変換されたんでしょう。若者が社会貢献をする姿が浮かんだのかもしれませんね。そういうケースもあるかもしれませんので、あながち間違いとは言いきれませんね。
 
昨今、成年後見という言葉を世間でも耳にする機会が増えましたので、言葉くらいは聞いたことあるけど詳細まではわからないという方も多いです。
 
また、成年後見制度は成人の知的障害者に対する制度で高齢者には関係ないものと勘違いされている方もちらほらお見受けします。成年後見制度は知的障害者はもちろん、その他精神障害で判断能力が欠けている方や認知症を患い判断能力が衰えた高齢者等も対象とする制度です。
 
特に高齢化が進む日本において、認知症高齢者数は右肩上がりに伸びていますね。現在300万人近くいるようですが、そのうち成年後見制度利用者は1割にも満たない数字です。制度自体の認知度があまり高くない事が要因のひとつと言えます。
 
認知症等で判断能力(事理を弁識する能力)が欠けてきた、もしくは失ってしまった方に対して、財産管理や身上監護の面でサポートする制度である成年後見制度、ご自身のもしもの為に、もしくは親御さんのもしもの為に、言葉と概要くらいは覚えておく必要がありますね。
 

第 69 句 生前に 家裁で放棄 遺留分

2014年11月24日(長岡俊行)
亡くなった人が晩年にした贈与や遺言で指定した分割案によって、自分の相続分が大きく減らされてしまうことがあり得ます。そんな状況にある相続人は、法律で保障されている部分については、生前贈与を受けた人や遺産を多めに受けた人に対して請求をすることができます。
 
これがいわゆる「遺留分減殺請求」です。この権利は遺留分を侵す贈与や遺贈があったことを知った時点から1年間で消滅するのですが、その期間が過ぎるのを待たずに積極的に放棄することもできます。
 
亡くなった人が行った贈与や遺言の内容に納得している相続人が、(自分の分まで)遺産をもらった人を早く安心させたいときなどに活用される制度なのではないでしょうか。
 
この遺留分の放棄は、既に亡くなっている人の遺産について行うときには、特別な手続きはいりません。口頭で伝えるだけでも法律的には問題ないのですが、念書などを作成しておくのが無難でしょう。
 
これに対して、将来発生する相続についての遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可を受けなければならないんですね。まだ生きている人の遺産を実質的に放棄することにもつながるのですから、それだけ要件が厳しくなるわけです。
 
ちなみに、遺留分放棄の許可を求める申立書には財産目録も付属していて、家庭裁判所は本人の財産状況なども含めて判断しているようです。
 

第 70 句 不安なら 予備的遺言を 記載する

2014年12月1日(井出誠)
遺言の効力は、遺言の成立時に発生するわけではなく、遺言者の死亡時に発生します。
 
遺言者が遺言書を作成してから、ご自身が亡くなって遺言の効力が発生するまでの間には、人によって異なるにしろ、数日から数十年といった月日が流れていくわけです。
 
この間には、相続人の死亡や遺産の増減等、ご自身を取り巻く状況や環境の変化も当然起こってくる可能性があります。
 
例えば、土地建物を長年一緒に同居してくれた長男とその家族(長男の嫁及び孫)に相続させたいと思い、「長男に相続させる」旨の遺言を残したとします。しかし、長男が交通事故で遺言者より先に亡くなってしまったような場合には、孫(長男の子供)は、後の相続発生時に土地建物を相続できるでしょうか? 長女や次男と揉めずにそのまま住み続けることができるでしょうか?
 
遺言者が、もしも長男になにかあっても、この家には孫や長男の嫁に住み続けて欲しいと願うのであれば、その「もしも」に備えて、遺言者の死亡以前に長男が死亡したときは、遺言者の有する土地建物を孫に相続させるといったような『予備的遺言』を一筆加えるといいかもしれませんね。
 
また、ご高齢の夫婦ともなると、正直、どちらが先に逝ってもおかしくないような状況も考えられます。もしも遺言者の死亡以前に配偶者が死亡したときは……といった『予備的遺言』も考える必要がありそうですね。
 

ブログから本が生まれました!


「相続を気軽に学べる解説書を」ということで、八王子の行政書士・社労士の井出さん(至誠法務労務サポート代表)と一緒にコツコツと書き溜めたブログが、1冊の本になりました。
 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。口語調の解説文が「わかりやすい!」と評判です。

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はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
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