第71句から第80句

第 71 句 「特別」の 受益と寄与が 認められ

2014年12月8日(長岡俊行)
亡くなった人に遺言がなかった場合は、法定相続分を基準に遺産分割協議を進めていくのが一般的です。兄弟間であれば平等に分けるのが原則なのですが、この「平等」に向けて調整するために、「特別受益」や「寄与分」といった話が出てくることもあるでしょう。
 
「特別受益」の代表的な例としては、「他の兄弟は高校を卒業して働いていたのに、一人だけ医学部まで進学させてもらった」みたいな感じでしょうか。反対に「他の兄弟を高校まで進学させるために、一人だけ中学卒業後に親の家業を手伝っていた」という場合は、「寄与分」がからんできそうです。
 
前者は「あなたは得をしたのだから遺産の取り分を少なくして」という主張になり、後者は「私は苦労したのだから遺産の取り分を多くして」ということになるわけです。
 
どちらの場合であっても、家庭裁判所が判断をするときには、その当時の家計の状況なども踏まえて合理的な数字を出すようです。ただ、「家族は互いに助け合うのが当然」という考え方もありますので、ある程度の援助やお手伝いは無視されることもあり得ます。
 
「特別」受益はもちろんのこと、寄与分についても、原則的には特別なものしか認められないんですね。
 
ただ、「平等」や「特別」という言葉はとらえ方次第なところもありますので、お互いの主張がかみ合わないと、家庭裁判所までもつれ込むことになるわけです。
 

第 72 句 年の瀬に 心を整理 「夕やけ」で

2014年12月15日(井出誠)
一年を締めくくる月である12月の別称は「師走」です。
 
言葉の由来は諸説あるようですが、その中でも「お坊さんも走るほど忙しい月」というものがあります。ここで言う「師」は、お坊さんを指しているんですね。
 
年の瀬に、ご先祖様の霊を弔う事を目的として、お坊さんを呼んでお経を上げてもらう風習から来ているようです。お坊さんが、一日に何件もあちこち檀家さんを忙しく走り回る様子が目に浮かびます。
 
さて、お坊さんは呼ばないにしても、12月というのは、家族や親族が集まる機会が他の月に比べて多いのではないでしょうか。そんな際には、ご自身やご家族の今後を考えてみたりするかもしれません。ただでさえ、ご高齢になればなるほど、体調や財産の事、子供や孫の今後やご自身の死後の事など悩みや不安は増えていくものです。
 
新しい年を迎えるにあたって、年の瀬に一度こころと頭を整理する機会を持つといいのではないでしょうか。それには、一度全てを書き出してみるということがとても有効です。
 
そんな時に役立つのが、エンディングノートかと思います。遺言ほど堅苦しいものじゃありませんので、自由に書くことができます。ただ、市販のエンディングノートだとページ数と分量が多すぎるという方、八王子高齢者支援協会では、4ページでかんたんに書けるオリジナルエンディングシート『夕やけ』をご用意しておりますので、ご興味ある方は是非。
 

第 73 句 相続税 負担を軽く 基礎控除

2014年12月22日(長岡俊行)
「相続税」と聞くと、「払えなくて先祖伝来の土地を手放す」といった話を想像する人もいるのではないでしょうか。一方で、「うちには関係ない」と考えている人も多いのではないかと思われます。
 
たしかに、遺産の内容によっては、のこされた家族が納税に苦労することもあり得ます。しかし、実際には、相続税が課税されるような資産家はごく一部であり、件数としてはだいたい4%という話です。(平成26年12月現在)
 
これは、相続税に「基礎控除」というものがあるからなんですね。課税されるのは基礎控除を超えた部分だけなので、遺産の総額が基礎控除の金額以内に収まっていれば、相続税は1円もかからないわけです。
 
それでは、この基礎控除はいくらなのかというと、5千万円に相続人の人数かける1千万円を足した金額となっています。ですから、相続人が妻と子の2名だったら、7千万円までは税金がかかりません。
 
ただし、平成27年1月1日からは、基礎控除が3千万円に相続人かける6百万円となります。ですから、先ほどの例であれば、4千2百万円を超えた部分に税金がかかってくるわけです。
 
ちなみに、基礎控除の額は死亡日が基準となりますので、たとえ相続税の申告と納付が平成27年以降であっても、平成26年12月31日までに亡くなった方であれば、5千万円+αの基礎控除が適用されるんですね。
 

第 74 句 保存期間 公正証書は 二十年

2015年1月5日(井出誠)
公正証書遺言を作成した場合には、公証役場にてその原本が保管されます。
 
「原本保管の期間はどれくらいですか?」というご質問をよく頂きます。
 
公証人法施行規則には、公正証書の原本保管期間は、原則20年間と規定されています。そうしますと、65歳で公正証書遺言を作った場合85歳までしか原本保管がされないと言うことになります。遺言は、遺言者の死亡時に初めて効力を生じるわけですから、遺言者のご存命中に保管期間が満了してしまっては困りますね。
 
故に、公証人法施行規則には、『保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない』という規定もあるんです。
 
公正証書遺言は正しくこれにあたりますので、 少なくとも遺言者のご存命中は保存されることになっています。具体的な保管期間については、各公証役場で取扱いが異なるようですが、概ね遺言者が120歳になるまでは保管する事になっているようです。この年齢につきましては、日本人の最高年齢の方の年齢をおおまかな基準とされています。
 
また昨今、東日本大震災のような大災害に備えて、公正証書遺言については、作成時に原本と電磁的記録とを二重に保存しておく、原本の二重保存制度が構築されました。
 
このあたりを考慮すると、やはり自筆証書遺言よりも多少お金がかかっても、公正証書で遺言を残す意味がご理解して頂けるのではないでしょうか。
 

第 75 句 基礎控除 増やせる養子 二人まで

2015年1月12日(長岡俊行)
相続税の基礎控除額は、3千万円に法定相続人の人数かける6百万円を加えて計算します。ですから、ある程度の遺産があった場合、法定相続人が多ければ多いほど、納める相続税額は少なくて済むわけです。
 
それでは親族が多ければ必ず基礎控除額も大きくなるのかというと、じつはそうとも限りません。法定相続人には優先順位がありますので、たとえ兄弟が10人いたとしても、配偶者と子が一人ずつであれば、法定相続人は2名だけとなります。
 
もちろん、子の人数が多い場合は、基礎控除の額も大きくなります。そのようなわけで、いわゆる「節税対策」として養子縁組を活用する人もいるようです。
 
ただし、基礎控除の計算に入れられる養子の数には限度がありまして、被相続人に実の子がいる場合は一人だけ、実の子がいなくても二人までしか認められないんですね。
 
もっとも、再婚家庭で配偶者の連れ子を養子にした場合などは、すべて実の子として扱われますので、基礎控除の計算に入れられる人数に制限はありません。
 
ちなみに、日本では一夫多妻や一妻多夫といったものが認められていませんので、配偶者を増やす節税対策というのは、あり得ない話なんですね。
 

第 76 句 遺言書を 作成するため 準備する

2015年1月18日(井出誠)
遺言公正証書は、公証役場にて公証人が作成しますが、何の準備もなく、手数料だけ持って公証役場に行けば、その場で作ってくれるというものではありません。どんな書類を準備しておけばいいのか? 一部代表的なものを見ていきましょう。
 
まずは、遺言者の戸籍謄本が必要になります。この戸籍謄本は法定相続人との関係がわかるものが必要ですので、例えばお子さんが結婚して除籍されたことがわかるもの等が必要になってきます。場合によっては除籍謄本や改正原戸籍等も収集する必要があります。
 
このあたりの書類に関しては、行政書士等一定の資格者に依頼した場合は、その者が「職務上請求書」を利用して取得できますので、遺言者の負担軽減にも繋がります。
 
次に、遺言者の実印と印鑑登録証明書が必要です。印鑑登録証明書に関しては発行日から3か月以内のものが有効ですので、取得時期にはお気を付け下さい。
 
財産関係の資料で代表的なものと言えば、預貯金と不動産に関するものですね。
 
預貯金に関しては各金融機関のご通帳の写しを用意しておけばよいので、それほど手間ではありません。
 
不動産の場合、不動産登記事項証明書は必須です。不動産登記事項証明書を法務局で請求する際には、土地の地番や建物の家屋番号が必要になります。住居表示(住所)とは異なりますので、事前に登記済証(いわゆる権利証)や固定資産の納税証明書等で確認しましょう。
 

第 77 句 相続人 行方知れずで 家裁まで

2015年1月26日(長岡俊行)
遺産分割協議は、相続人全員が関わっていないと無効になってしまいます。それでは、相続人の中に行方不明者がいる場合はどうすればよいのでしょうか。
 
このような場合、大きく分けて2つの対応策が考えられます。
 
一つ目は、行方不明者の財産を管理する人を設定する方法です。この人は、「不在者財産管理人」と呼ばれ、不在者本人の財産を管理するのが基本なのですが、家庭裁判所の許可を得て遺産分割をすることもできるんですね。
 
もう一つは、「失踪宣告」という制度を活用する方法です。行方不明になった人の生死が7年間にわたって明らかでないときは、その人は法律上死亡したものとみなすことができます。また、事故や災害などによって行方不明になった場合は、7年間ではなく1年間で判定します。
 
失踪宣告の場合は不在者が死亡したものとみなされますので、その人に子がいなければ相続人が一人減ることになりますが、子がいた場合は代襲相続によってその子が相続人となるんですね。また、その人自身の相続も開始するので、そちらの手続きも必要になってくるわけです。
 
不在者財産管理人選任と失踪宣告のどちらを選ぶかは相続人次第ですが、いずれの場合もまずは家庭裁判所に申し立てることになります。
 

第 78 句 遺族基礎 年金支給 子がいれば

2015年2月2日(井出誠)
国民年金に加入中の方や老齢基礎年金の受給資格期間を満たした方が死亡した際には、一定の遺族に対して遺族基礎年金が支給されます。当然、被保険者の方が死亡した場合には、保険料納付要件等のハードルは存在します。
 
遺族基礎年金の受給資格がある、一定の遺族とはいったい誰でしょうか? このあたり遺族厚生年金に比べると対象が非常に狭いので知っておく必要があるかと思います。
 
遺族基礎年金の支給対象となる遺族は、1「死亡した者によって生計を維持されていた子のある配偶者」又は2「死亡した者によって生計を維持されていた子」です。
 
1の子のある配偶者は、昨年までは子のある妻とされていました。いわゆる母子家庭です。2014年の法改正で子のある夫も対象となったことから配偶者という記載に変わっています。
 
とにかく1でも2でも子がいなければ遺族基礎年金の対象にはならないんですね。
 
また、子なら何歳でもいいのかといえば、ここにも年齢的な縛りがございます。
 
遺族基礎年金の支給対象となる子とは、次の者に限ります。(1)18歳到達年度の末日を経過していない子。(2)20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子です。
 
子供なら30代でも40代でもいいわけではないんですね。
 
若くして、被保険者が亡くなる場合には18歳未満の子がいるケースも多いですが、老齢年金受給者の死亡の場合に18歳未満の子というケースは少ないですね。
 

第 79 句 相続人 欠けた分割 やり直し

2015年2月9日(長岡俊行)
遺産分割は相続人全員でしなければなりません。一般的な協議であろうと家庭裁判所での審判であろうと、一人でも相続人が欠けているものは無効となります。
 
そのようなわけで、相続人の中に未成年者や成年被後見人がいる場合は、特別代理人や成年後見監督人などが必要になることもあるんですね。行方不明者がいたときに不在者財産管理人を選任するのも同じ理屈です。
 
ただ、全員参加とはいっても、全員が一つの場所に集まる必要まではないとされています。ですから、電話などで遺産の分け方を話し合って、まとまった遺産分割協議書を郵送で回して各相続人が実印をついていくようなやり方も、とくに珍しいことではないようです。
 
また、遺産分割協議の結果、ある相続人の取り分がゼロになったとしても、全員が納得しているのであれば、まったく問題はありません。つまり、必ずしも全員に遺産が行き渡らなくてもよいわけです。
 
遺産分割に相続人全員の意思が関わっているかどうか……法律的にはそこが重要になってきます。
 
そう考えると、亡くなった人の持っていた不動産や預貯金の名義変更をする際に、すべての相続人を証明するための戸籍謄本等と全員の実印を押した遺産分割協議書を求められるのも、筋の通った話ではあるんですね。
 

第 80 句 埋葬の スタイル近年 多様化に

2015年2月16日(井出誠)
歳を重ねるにつれ、自らが亡くなった後、どこに・どのように埋葬されるのかは気になるものですね。一昔前であれば、死んだら当然、先祖代々のお墓に埋葬されるものとお考えになられる方も多かったかもしれません。
 
ただ、いつの時代も姑と同じ墓には入りたくないとか、死んだら夫方のお墓でなく、自分の親と同じお墓に埋葬されたいなんて要望も多々あるようですが……。
 
昨今、生前の生活スタイル及び価値観の多様化に伴って、埋葬スタイルも自分にふさわしいものを事前に探しておく方が増えてきたように思います。
 
また、ご供養の種類も時代に伴って年々多様化してきておりますので、いくつか見ていきたいと思います。
 
現在、高齢者向けのお墓講座などで人気が高いのが『自然葬』と言われる埋葬方式です。【海洋散骨】【空中散骨】や【樹木葬】といわれるものです。
 
「お墓にお金をかけたくない」「死んだ後は自然に帰りたい」などと考える方も多く、特におひとりさまには人気です。
 
冷暖房完備、雨風しのげる屋内で掃除や草むしりも要らない【納骨堂】も、以前のように一時預かりの場ではなく、恒久的に遺骨をご供養する場所として人気があるようです。コインロッカー式のようなものも多いですね。
 
その他にも、インターネット上にお墓を作る【サイバーストーン】や散骨した後一部の遺骨をアクセサリーにして残された家族が身につけておく【手元供養】なども注目を集めています。
 

ブログから本が生まれました!


「相続を気軽に学べる解説書を」ということで、八王子の行政書士・社労士の井出さん(至誠法務労務サポート代表)と一緒にコツコツと書き溜めたブログが、1冊の本になりました。
 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。口語調の解説文が「わかりやすい!」と評判です。

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はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
中小企業の経営に役立つ情報を発信していきたいと思っているのですが……