法務省の提案する相続関係の証明書について考える

 新聞によりますと、相続登記のために作成した「相続関係説明図」に証明書としての効力を与え、金融機関などの手続きにも利用できる制度を法務省が検討しているそうです。
 来年5月からの開始を目指すということで、ちょうど1年前に発表された「相続税の遺言控除」よりも先に実現するかもしれません。
 

1.どんな利点があるのか

 この証明書があれば亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等が不要になり、預貯金の解約手続などが簡素化されることになります。もっとも、証明書発行の前段階として、登記申請をするときには戸籍をそろえる必要がありますので、収集の手間は省略されません。
 

2.証明書取得の専門家は誰なのか

 証明書の形式は、相続関係説明図(家系図みたいなもの)に登記官の証明が付くイメージを想定しているようです。いまどき手書きの図をベースにするとは考えづらいので、申請された情報を基に法務局で作成してくれるのかもしれません。となると、その申請を代理で行えるのは司法書士ということになるでしょう。
 

3.行政書士への影響はどうなのか

 前述したとおり、戸籍収集の手間はなくなりませんので、行政書士がお手伝いする領域には変化がないようにも感じられます。しかし、「最初に相続登記を済ませて証明書を取る」という認識が広まると、これまで以上に「相続=司法書士」のイメージが強くなりそうです。
 相続人が金融機関等の窓口で相談したときに、「まずは相続登記を済ませておくと後がラクですよ。その専門家は……司法書士さんですね」という案内になるのは、当然のことといえるでしょう。ここであえて行政書士を紹介するのは、ちょっと不自然な気がします。
 

4.行政書士はどうするべきか

 国民にとって利益のある制度であれば、よほど費用対効果が悪いといった理由でもなければ、行政書士が反対できるものではありません。それならば、行政書士も同じような証明書を作成することはできないのでしょうか。
 
 関係説明図を公正証書にできれば、遺言公正証書のように強力な書類になるかもしれません。しかし、公証役場で作るからには、それなりの費用がかかってしまうでしょう。それに対して法務省の発行する証明書は、おそらく数百円で取得できることになりそうです。
(新聞記事に「無料」とあるのは作成と保管の料金であって、謄本の発行には手数料がかかるのではないかと予想されます)
 
 役所で発行してもらうのはどうでしょうか。窓口に関係図を提出して公印を押してもらうような方式は現実的ではないものの、戸籍をそろえたうえで専用の届出用紙に必要事項を記載して提出し、新たに証明書を作ってもらうことならできそうです。ようは、婚姻届を出して新しい戸籍を作るようなイメージですね。それが登記にも使えるのであれば、多少は価値がありそうです。
 
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 ただ、すでに法務省が新しい証明書を作るといっているのに、同じようなものを後から(総務省が?)開発するのは無駄でしょう。ようするに、行政書士は完全に出遅れたんですね。
 

5.もっと便利な仕組みはないのか

 じつをいうと、5年くらい前から考えていたアイデアがあります。住基カードを利用すれば、本籍地と異なる市町村でも戸籍謄本を取得できますよね、しかも、コンビニのコピー機で。
 ……と思って調べてみたところ、平成28年7月1日現在で対応しているのは、兵庫県神戸市と奈良県生駒市だけでした。住基カードが普及しないわけです。
 
 私が考えていたのは、「行政書士の電子署名を利用して、全国の戸籍を最寄りの市町村窓口で発行」という仕組みだったのですが、行政書士の信用に関する問題を棚上げしたとしても、実現の可能性は極めて低い案だったようです。
 
 行政書士のことは置いておいて、マイナンバー制度が発展すれば、いずれは一つの窓口で必要な書類がそろえられるようになるかもしれません。というより、法定相続人も自動的に割り出されて、そもそも戸籍を集める必要がなくなりそうです。まあ、まだまだ先の話でしょうが。
 

6.まとめ

 私の考えた代替案はどれもポンコツでしたので、「法務省の制度が実現して国民の生活が少し便利になる(と同時に相続業界で司法書士の存在感が増す)」というのが、現実的な路線なのではないでしょうか。
 そんなわけで、行政書士の活路はやはり遺言にあるのではないかと思う今日この頃です。
 
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「相続を気軽に学べる解説書を」ということで、八王子の行政書士・社労士の井出さん(至誠法務労務サポート代表)と一緒にコツコツと書き溜めたブログが、1冊の本になりました。
 100の題材を「相続」「遺言」「成年後見」「終活」の4章に分け、各タイトルは五七五の川柳形式にしてあります。口語調の解説文が「わかりやすい!」と評判です。

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はちおうじ総務相談所の長岡です。

GONZOを名乗りながらも、当たり障りのない記事を書いています。
中小企業の経営に役立つ情報を発信していきたいと思っているのですが……